読書記録 -『ココロノウタ』

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『ココロノウタ ~息子と歩んだ4年間、そしてこれから~』
今井 絵理子 (著), 祥伝社, 2009年2月14日


図書館本。書棚のあいだをあてもなく歩きまわっていたときに、たまたま目に留まり借りてみた。ちょうど、最近私が興味を持っていた「手話」や「黒柳徹子さん(トットちゃん)」などに関する内容が書かれた部分などもあり、あっという間に読み終えてしまった。


どんな本?

歌手(当時)の著者・今井絵理子さんが、「高度感音性難聴」という障がいを抱える自身の息子さんについてのこと、またその子育てを通して考えられた数々の事柄などについて、エッセイ形式で綴られている本。作中には「黒柳徹子さん」や医師の「加我君孝先生」との対談も収録されており、さまざまな面から考えをめぐらせてみることもできる。

※「感音性難聴」とは?

→「『内耳』または『聴神経』の、いずれかの病変によって生じる難聴」のことだそう(下記の引用参照)。

感音難聴は,内耳(内耳性)または聴神経(第8脳神経)(後迷路性― 内耳性難聴と後迷路性難聴の違いの表を参照)のいずれかの病変によって生じる。内耳性難聴はときに可逆的であり,生命に脅かすことはほとんどないため,この区別は重要である。後迷路性難聴は,回復可能なことはまれであり,生命を脅かす脳腫瘍(一般的には小脳橋角部腫瘍)に起因する場合もある。さらなる感音難聴の種類にauditory neuropathy spectrum disorder(聴覚神経障害スペクトラム障害)と呼ばれるものがあり,この場合は音を感知できるが信号が脳に正しく送られず,その原因は内有毛細胞または蝸牛内においてそれらを支配するニューロンの異常であると考えられている(1)。

難聴 – 16. 耳鼻咽喉疾患 – MSDマニュアル プロフェッショナル版 (msdmanuals.com)

ちなみに、私が「感音性難聴」と「伝音性難聴」の2つの違いを知るきっかけになったのは、確か以下の動画だった(たぶん……!)。↓

↑「感音性難聴」と「伝音性難聴」の、聞こえ方の違いについて

心に響いた箇所の印象

「子どもは子ども同士で学び合う」
 私はその言葉を息子の成長を見ながら感じた。

 保育園で息子はいつも楽しそうだった。走ること、おもちゃの取り合い、あやまること、一緒になにかをすること、さまざまなことを経験させてもらい、私たちは大きく変わっていった。息子を通して、先生方やお母さんたち、子どもたちの行動を見て、知ることだったり、感じることだったり、日々学んでいた。そして、息子も友達の行動をひたすら見て色々なことを覚えていた。よく周りを見ていた。この1年間で学んだことはたくさんあった。
 先生たちが聞こえる子どもたちに補聴器というものを見せて「これはらいむくんにとって大切なものだから壊さないようにね」「らいむくんは耳が聞こえないからゆっくりお話をするのよ~。ゆっくりとね」と何回も教えてくれた。子どもたちは後ろから「らいむくーん」と呼んでも振り向かない息子を見て自然に覚えていくので、ちゃんと目の前にきて「らいむくん、このおもちゃであそぼう」と言ってくれるようになる。息子も嬉しそうに「うんうん」とうなずいていた。ある女の子は息子の手をひき、おもちゃのところに連れて行ったりしてくれていた。子供たちは聞こえる、聞こえないということは関係なく、素直に色々なことを覚えて、他のみんなと同じ友達として息子に接してくれていた。
 そんな子どもたちと先生の優しさと理解があったからこそ、楽しい保育園生活を送れていたんだと思う。本当にありがとう。
 もっともっと、こういう保育園や幼稚園があったらいのにな~と思いながら、私と息子は保育園を卒業した。

「みんな一緒に。ずっと一緒に」

 息子とともに通った保育園で学んだことでもあり、これからの未来の子どもたちへの願いでもある。

「みんな一緒に。ずっと一緒に」

「息子と一緒に。ずっと一緒に」

P78~80

黒柳 (中略)いろんな人がいるんだってことをみんなでわかりあって、とにかく、いっしょにやっていくんだ、ってことだと思います。
 ときどき混雑してる中で人のことを押したりする人がいるじゃない?なんで人のことを押したりするのって思うけど、もしかするとその人はどこかに障がいを持っていて、つんのめったのかもしれないし、何かあったのかもしれない。私は、いっさい、人のことを悪意を持ってみないように、悪意でやってるわけじゃないと思うようにしています。

P185, 収録された対談のなかでの、黒柳徹子さんの言葉

感想と思考

「いっしょ」って、いったい何なんだろう。この本を読み終えて、まず私が最初に考えたことはそれだった。


実は私はいままで、「いっしょ」という言葉が少し苦手だった。「いつもいっしょなんだよ」「いっしょだと嬉しいね、楽しいね」そうひとから声をかけられたりしたときもだから、どことなく常に違和感があった。「『いっしょ』って、何?そんなにもいいものなの?」「どうして、いつもひとと『同じ』でいたり『一体化』していたりすることが、そんなにも素晴らしいとされるの?」そんなふうに思う気持ちが、心の中にあったからだと思う。

でも……この本を読むなかでだんだんその感覚、「いっしょ」という言葉の自分なりの定義、それが少しずつ揺らいでくるのが分かった。もしかすると「いっしょ」がもつ意味は実は、もう少し広いものだったのかも、そんな思いが大きくなっていった。「いっしょ」って、何?


「いっしょ」って、もう本当に、何なの?頭のなかではそればかりがぐるぐるぐる……。困り果てた私はそこで、とりあえず「いっしょ」という言葉をいろいろな辞書でひいてみることにした。まず最初は、私が持っている自分の辞書『例解新国語辞典 第九版(三省堂)』。書いてあったのは、こうだった。

いっしょ【一緒】〈名〉
1)一つにまとめること。まとまった状態。〔用例〕一緒にする。一緒になる。
2)区別がつかない状態であること。〔用例〕そんな幼稚なことをするのでは赤んぼうと一緒だ。あいつと一緒にしないでくれ。
3)ともに同じ行動をすること。〔用例〕そこまでご一緒しましょう。▷→いっしょに

P70

いっしょに【一緒に】〈副〉
二つ以上のものがまとまって。〔用例〕一緒に遊ぶ。一緒に行きましょう。〔類〕ともに。

P70

ついでに、〔類〕のマークがついていた「ともに」も併せてひいてみた。↓

ともに【共に】〈副〉
1)(「…と共に」の形で)…といっしょに。〔用例〕友人と共に恩師を訪ねた。
2)(「…を共にする」の形で)いっしょに…をする。〔用例〕寝起きを共にする(=いっしょに生活する)。行を共にする(=いっしょに行く)。
3)(「…と共に」の形で)…でもあるし、また同時に…だ。〔用例〕うれしく感じるとともに、すまなくも思う。

P875~876

※以上3つ:『例解新国語辞典 第九版』林 四郎 (監修), 三省堂, 1984年2月1日 初版(2016年1月10日 第九版)
※改行は私による

うーん、確かにそうなんだけど。そうなんだけど、「いっしょ」はこれだけではない気がする。私が探している「いっしょ」は、これ以外の意味もあるはず……。


ということで次は、持っていた「電子辞書」を使用しさまざまな種類の国語辞典をひき比べてみた。結果は、こう。↓

いっしょ【一緒】
〔本来は「一所」〕
1)行動をともにすること。「帰りはいつもーだ」「ーにしかられた仲」「葉子は…云ひ出された時からーする下心ではあつたのだ/或る女 武郎」
2)一つにまとめること。「全部ーに包んで下さい」
3)同じであること。「入社したのはーだ」「あいつとーにしないでくれ」
4)(「ご一緒する」の形で)同行することをへりくだっていう。「駅までごーしましょう」
〔類語〕帯同、連れ合う、連れる、同行、同道、同伴、道連れ、一斉に、偕行、同行、同時、同道、共共、共に・倶に、イコール、同じ、同然、同前、同様、等しい・均しい・斉しい

『三省堂 スーパー大辞林3.0』三省堂, 2015年1月 発行

いっしょ【一緒】〔多く「ーに」の形で、副詞として用いられる)
1)二人以上の人が同じ(連れだって)行動をすること(様子)。「別別に出かけ、途中でーになる〔=落ち合う〕/よかったら ごーしましょう〔お供いたします〕/親子ーに食事することが一年に一日も無い」
2)発着などの時点が同時であること(様子)。「盆と正月がーにやって来る/彼とは中学がーでした/そう二人ーに言われても困るよ」
3)同一である(に扱う)こと(様子)。「君の意見も僕とーだ〔=変りが無い〕/いい事も悪い事もーにする〔無差別に扱う〕」
4)別別のものを合わせる(合せて扱う)こと(様子)。「手紙とーに〔=手紙を添えて〕送る/三か月分の手当てをーに〔=一まとめにして〕受け取る/全部ーで〔=合計して〕お幾らですか/ーになる〔=結婚する〕/ー盛」
《表記》古くは「一所」と書いた。

『新明解国語辞典 第七版』三省堂, 2013年1月 発行

いっしょ【一緒】〔名〕
1)幾つかのものをまとめて一つにすること。「数種類の野菜をーに盛り合わせる」「衣類も食品もーに詰め込む」
2)〔関西などの方言から〕同じであること。「六年間ーのチームでやってきた」「君の意見は彼と全くーだ」
▷この場合は「同じ」を使うのが一般的。
3)行動をともにするtこと。「夫婦でーに出かける」「盆と正月がーに来たような忙しさだ」
4)〔自サ変〕《「御ーする」の形で》「一緒に行く」、「一緒にいる」の謙譲語。「駅まで御ーしましょう」
♦「一所」の転。
〔表記〕もと「一所」とも書いた。

『明鏡国語辞典 第二版』大修館書店, 2015年4月 発行

〔一緒〕イッショ
1)ひとすじ。ひとすじの糸。▼緒は、糸すじ。
2)ひとまとめ。一つ。同一。
3)つれだつ。ともに。

『新漢語林 第二版』大修館書店, 2015年4月 発行

なるほど、なるほど。少し解像度が上がった気はするけれど、それでもなおまだお目当ての言葉(表現)は見つからないなあ……。


そこで今度は「図書館」に行って、「広辞苑」をひいてみることにした。結果は、こうだった。↓

いっ-しょ【一緒】(ひとまとめの意)
1)区別のないこと。同一。「敵味方ーにする」「好みがーだ」
2)行動を共にすること。相伴うこと。連れだつこと。一所。「ごーします」
3)時を同じくすること。同時。「卒業は彼とーだ」

P183

ー – くた【一緒くた】
雑多なものをまぜ合わせること。同一視すること。「材料をーに煮込む」

P183

ー になる
1)二つ以上のものが、一つに合わさる。ある場所で出会う。
2)夫婦になる。

P183

※以上3つ:『広辞苑 第七版』新村 出 (編), 岩波書店, 1955年5月25日 初版 (2018年1月12日 第七版)

※ついでに一つ前の版である「第六版」もあわせてひいてみたが、「いっしょ」については特に改訂されてはおらず、全く同じ説明がされていた。


いろいろな辞書をひき比べてみたなかでは、一番今回の私が求めている意味としてしっくり(?)きたのは広辞苑の「時を同じくする」のような気がした。……とはいえ、「もやもや」は依然として残っている。^^;

「同じ」ではないかもしれない。いま自分の「目に見える」すぐ隣には、居るわけではないのかもしれない。もしかしたら永遠に平行線で交わることがない、ように思えてしまうことがあるのかもしれない。でも。

それでも「いっしょ」という言葉のなかにそれを、包み込むことはできないのだろうか。同一でなくても、混ざり合うことができなくても、「いっしょ」でいることははたして、本当に不可能なのだろうか……。


「いっしょ」って。一体、何なんだろう。またひとつ、私の胸の内の「問い」が増えた。

迷ったり悩んだりしながら、私はこれからもこの新たな問いについて真摯に向き合っていきたい。

そら / Sora

通信制高校に在籍中の17歳。 気に入った本や、日々の生活を通して感じたことなどを思いのままに綴ります。 趣味は読書、手芸、それに音楽を聴いたり歌ったりすることです :) I am Japanese, 17 years old and a homeschooler. Keep up with my daily life and journals!! Fav -> Reading, Handmade, Music, etc

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  • Post last modified:March 11, 2024
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