読書記録 – 「原っぱ」という社会がほしい (Part 1)

読書記録 – 「原っぱ」という社会がほしい (Part 1)


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「原っぱ」という社会がほしい by 橋本 治
河出新書 2021年1月20日


今回読んだこの本の中には、「この部分を起点として考えを深めたい」と思える箇所がいくつもあった(ありすぎるくらいに)……!
そこで私はこの本に関する投稿を、2つに分けることにした。よって今表示されている「この」投稿は、1/2つ目(となる予定)だ。

(※「2投稿目」はこちら。→ 読書記録 – 「原っぱ」という社会がほしい (Part 2) | FUTURE KEY (future-key.com) )。


どんな本?

過去の著作や公演の記録などをもとに、昭和から平成にかけての時代の変遷や、あるべき社会の姿などのテーマに対する橋本治さんの論をまとめ、再構成した本。また「子供の遊び」と「社会構築」の関係性についても、この本を通じて考えを深めることができる。

心に響いた箇所の引用

上でも書いたとおり、今回私はこの本についての投稿を2つに分けている。よって以下で引用するのは、いくつかある「心に響いた箇所」のうち「この投稿のテーマにそぐう部分」だ。

私のその作品は評論集で、私にとって評論というのは、「読めば、合っているか間違っているか分かる」というようなもので、だから「間違ってないように書こう」と思い、「間違ってたら困る」と思って点検もする。判断基準が「合ってるか、合ってないか」だけだから、小説よりも善し悪しが分かりやすい。そう思うんだが、なにを書いても「評価」以前に「反応」がない。よく考えたら私は、評論家になりたかったわけではないから、そっちの「評価」なんかどうでもいいのだが、自分のやったことが「合ってる」のか「合ってない」のかがはっきりしないと、それで「いい」と思ってる自分の頭がおかしくなりそうで困る。「間違ってんのかな?そうそう間違ってるとは思わないけど、だとすると、そう思うこっちの頭がおかしいのかな?」という、もうちょっとで自意識過剰の方向にさまよい込むところだったけれど、それに対するジャッジが出たー「いい、悪い、じゃない誰も知らないんだよ」と。

P25

よく考えれば分かるが、ネットのアクセスランキングというものは「なにがどれだけの人に選ばれたか」を示すだけのもので、その順位に「なにがよいか」は表されない。なにが「よい」かと言えば、多くの人に支持された=よい」でしかない。だが、時々、「なんでこんなどうでもいいものが”一位”なんかになるんだ?」とも思うが、それは「善し悪し」を離れた、ただ「多くの人がアクセスした」でしかないからしようがない。
そもそも人気投票というものがそういうものだから、「アクセスランキングが、評価とは別の単なる”数の集計”」であっても不思議はないのだが、不思議なのは、いつの間にか世の中全体から批評というものが消えて、「人気があるんだらいいじゃないか」になってしまったことである。(中略)
そのことを踏まえて、「多くの人が好むもの」を提供して行けば、批判されることのない「好ましいもの」ばかりになる。逆に「金になりそうな消化のいいもの」だけが残って、「吞み込みにくくて苦い批評性のあるもの」の存在余地は少なくなって行く。つまり「経済的に成り立ちにくいから消えて行くしかない」になってしまう。

P78

感想と思考

私は引用箇所の文章を読んだとき、思わず首がもげそうなほど何度も、うんうんと頷いてしまった。それくらい、この部分の筆者の論には納得し同意することができたのだ。


最初にこのブログを設置したとき、私は実は「にほんブログ村」という、ブログのアクセスランキングサイトに登録していた。けれどとあるブロガーさんの投稿に出会ったことで、自身の考えががらりと変化し、登録をやめた。またそれと同時に、個人的に持っていた各SNS(Twitter, Instagram, Facebookなど)のアカウントも整理して最小限の数にまで減らし、その後スマホからはそれらのアプリを全て削除した(ちなみにその「とあるブロガーさんの投稿」とは、右記のリンクのものだ。→ テクノロジーもSNSも好きだったわたしが、TwitterとFacebookをやめることにした5つの理由 (yumemana.com) )。

引用箇所で橋本さんが述べているとおり、「人気のあるもの(アクセス数の多いもの)」と「中身が良いもの、本当に価値のあるもの」とは本当はイコールではない。それなのに、「アクセスランキング」という一見分かりやすいものを導入することで、その数値のみに翻弄されてしまい、無意識のうちに「自分の本心」を無視したり差し置いたりして「より多くの人に好まれるもの」を作る(書く)ことになる可能性がある。そのことに気がついたとき、私は少し恐ろしいなとさえ思ってしまった。「まるでそれは、『媚びを売ってまでして人に好かれようとする人』のようじゃないか……」と感じてしまったからだ。

例えばこれが、書籍などの出版物について(書籍というのはひとつの例だが、要はインターネット以外の世界の出来事)だったらどうだろう。確かにそこにも優れたものに贈られる「賞」などはあるし、さまざまな方法で「良いもの」を選び格付けされる機会だってたくさん存在する。けれど、それらと「アクセスランキング」とには決定的な違いがあると私は思う。それは、「そこに人間たちの主観的な視点が含まれているかどうか」だ。

さまざまな書籍の中から賞を贈るものが選定されるとき、そこには複数人の「審査をする人」がいる。もちろんそこにたどり着くまでには、売上ランキングなど「機械的に抽出された順位」も影響していることだろう。とはいえ最終的には、それ「だけ」にとらわれることはなく「読者たちの感想」「審査員たちの書評」などいくつかの要素が加味され、総合的に評価したうえで結果が発表される。

「それが本当に良いもの」かどうかなんて、複数人で中身を批評しあわないと本当に見極めることなど不可能なのに、単に「多くの人に好まれているから」という理由だけで推してしまうのは、なんだかものすごく浅はかなやり方なんだなぁ……なんて、私はこの本の「引用箇所」を読んで思ってしまったのだ。


それからもうひとつ。

1つ目の「引用箇所」で橋本さんは、「それが良いものであろうがそうでなかろうが、人々にその情報が『そこにある』と認知されていなければ、そもそも存在しないのと同じ。批評の対象にならない」というふうなことを述べている。私はこれを読んだとき「ものすごく面白いし、(自分にとっては)新しい視点だな!」と感じた。なぜなら今までの自分は、「本心を自分の外へ出す(→例えば、文章を書いたりするなど。)ときには、それがあまり人目に触れない状態にした方がより良いものを作れる」と考えていたからだ。

(※ちなみに……おそらくこう考えるように私がなった一番最初のきっかけは、小さい頃に「はれときどきぶた」という本の中で「日記はひとにみせるものじゃないのよ」というような内容の文章を読んだことではないかな、と思う。今その本が手元にあるわけではないし記憶もおぼろげなので、確かなことは言えないけれど……。)


どのようにして、情報や作品などを「評価」するか。ものすごく面白いテーマだと思う。

私が現在このブログへ読書記録などを投稿している一番の理由は、「未来の自分がいつでも過去の私の思考を辿れるようにするため」だ。どうしてそうしたくなったかについてはまたべつの機会に書くとして、けれどひとつ言えることは「金儲けのために書いているのではない」ということだ。だから機械的な順位などを意識せず、ただ自分の書きたいように書くことができている。でももし、その情報が「稼ぐため」に作られるものだとしたら?人々は「好まれること」に背を向けてでも、「本当に価値のあるもの」をそこへ書くことができるのだろうか……。

(あっ、一応断っておくけれど……私は決して、自分の書くものなどが「質の良く、誰がどう見ても価値あるもの」だと思っているわけではもちろんない(笑) ただ(未来の)自分にとってはきっと、少しは価値あるものになる。自己満足ができれば、それで良いのだ♪)

知られないと、批評の対象にはなることができない。一方で、たくさんの人に知られるには「好まれるもの」を作った方が速い(特に、インターネットの世界では)。矛盾しているし、大きなジレンマだなぁ……と思う。

もっとたくさんの本を読んだり、いろいろなものごとに出会ったりして、自分なりの結論にいつか辿り着けるといいな。

と、いうことでこの本の読書記録の前半は終了!後半は「2投稿目」へと続く。

2023. 4. 12 追記

その後、「2投稿目」を公開した(リンク: 読書記録 – 「原っぱ」という社会がほしい (Part 2) | FUTURE KEY (future-key.com) )。

そら / Sora

通信制高校に在籍中の17歳。 気に入った本や、日々の生活を通して感じたことなどを思いのままに綴ります。 趣味は読書、手芸、それに音楽を聴いたり歌ったりすることです :) I am Japanese, 17 years old and a homeschooler. Keep up with my daily life and journals!! Fav -> Reading, Handmade, Music, etc

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  • Post last modified:October 28, 2023
  • Post category:Books