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『入門 司法・犯罪心理学--理論と現場を学ぶ』
法と心理学会 監修, 有斐閣, 2022年3月10日
入手方法:購入(自身の本として)
気になった箇所の引用
■良き人生モデル
問題へのアプローチでは,犯罪に及ぶような問題性を取り除くというイメージが強いと思います。しかし,犯罪のない人生を送るために必要な資源を与えることで再犯に及ばないようになるといった考え方もできます。この考え方は良き人生モデル(グッドライフ・モデル)といわれ,ローズとウォード(Laws & Ward, 2011)によると,「犯罪者に内的な資源と外的な資源を備えさせることで,さらなる犯罪から離脱させることを目的とする改善更生理論」であるとされています。このモデルでは,すべての人は人生の目標や基本的欲求を生まれながらにして持っており,それらを達成したり満たしたりすることによって「良き人生」を送ることが可能になるとされています。そして,それを実現するために必要な援助が与えられれば,犯罪に頼らずに「良き人生」を送ることができると考えます。これらの目標や欲求は基本財と呼ばれており,その代表的なものは表 14-3 に示す通り,生存に不可欠なものから何かを創造するものまで多岐にわたります。
pp. 234~235
また,介入に当たっても改善や治療といったことに重点を置くのではなく,本人が望む「良き人生」プランを実現できるように環境を整えたり,スキルを高める援助をしたりすることが中心になります。そのため,こうした資源に注目するモデルにおいても,アセスメントは非常に重要となります。つまり,本人にとって最も重要な基本財は何なのか,その基本財を追求することはどのような価値をもつのか,その基本財を得るためにはどのようなスキルを身につける必要があるのかなどといったことを理解することが必要になります。
■支援者のメンタルヘルス
支援者もまた,多くの困難や障害に直面することを余儀なくされます。ここでは支援者に特徴的な心理的反応と留意点を挙げます。
二次的外傷性ストレス
被害者と同じような心身の反応が,支援者に起こることがあります(山下,2008)。これはトラウマとなる出来事を間接的に経験したことで生じるため,二次的外傷性ストレス,あるいは二次受傷(secondary traumatic stress ; Figley, 1995)と呼ばれています。
長年,日本の被害者臨床の第一線にいる小西(1996)は,被害者の経験がそれを聞く者に圧倒的な無力感をもたらすことを指摘しています。世の中にこれほど酷いことがあるのかと衝撃を受け,熱意ある支援者ほど,そうした状況で自分にできることはほとんどないのではないかと感じる傾向があるようです。宮地(2007)はさらに,支援者が社会や他者への不信感,そして罪悪感にも直面すると指摘します。被害者の経験を通して支援者もまた,なにも,だれも信じることができないと感じ,さらに自分が被害と無縁であることに罪悪感を覚え,私生活でさえ,そこで楽しんでいる自分を見出して後ろめたい思いを抱くことがあります。バーンアウトを防ぐ
pp. 257~258
トラウマに関わるうえでは,このように支援者自身も傷つくことが避けられません。こうした状況で支援者が,自身の心身の健康を保ちながら被害者と安定して関わり続けるためには,支援者が「孤立しないこと」が重要です。小西(1996)はトラウマの深刻さについて,被害者はもちろんのこと,支援者であっても1人で受け止められるものではないと述べたうえで,支援者がバーンアウトを避けるためには1人でやらないこと,協力者を作ることが不可欠だと指摘しています。
長期的展望をもつことの大切さも挙げられています。長井(2004)は,「燃えさかるような熱意をもって取り組むというよりもむしろ,どのような事態が途中で生じても投げ出さずに長期にわたって関わり続けられるだけの静かで穏やかな熱意」が支援者には求められると述べています。被害者や被害者をとりまく問題と長く関わっていこうとするならば,ひろい視野と長期的な時間軸をもつこと,そして燃え尽きないための努力が欠かせないといえるでしょう。
